【大学編入記】東工大(情報工学科)
この記事は東京工業大学のH28編入試験の大学編入記です.大学編入記のまとめはコチラの記事になります.
はじめに
東工大は例年,理学部,工学部合わせて30人程とっています.滑り止めとしては,東大落ちた人や,阪大落ちた人が受けに来る感じです.つまりそういった人たちとの戦いになります.また,ボーダーは合計で6割(240/400点)と言われており,仮に化学が0点でも数学,物理,英語のそれぞれで80点程度とれればなんとかなります.試験が難しい年はボーダーが合計5割くらいになったりするらしいです.
そして,やはり東工大.試験のレベルは僕が受けた電通大,筑波大とは格が違い,群を抜いて難しかったです.
[2017/4/18追記]
教育改革の影響により,H30年度の編入試験から各系の定員が明記されるようになったようです.すなわち,上記の「東工大は例年,理学部,工学部合わせて30人程とっています.」という説明はもはや通用しなくなります.詳しくは最新の募集要項をご覧になってください.
また,それに伴い,「ボーダーは合計で6割(240/400点)と言われており,」という説明も通用しなくなるかと思います.詳しい状況は一度新体制の編入試験が実施されてからでないと分かりませんが,上記の説明は鵜呑みにしないようにしてください.
試験科目と対策
東工大の試験科目は1日目に数学,物理,化学で,2日目に英語と面接があります.専門科目はありません.東工大は数学が簡単で,物理,化学,英語が難しいイメージです.
数学(120分)
数学は大問が4つあり,範囲としては微積分,微分方程式,線形代数で,応用数学や確率は出ません.東工大の数学は意外と簡単で,他の大学の対策をしていれば7割は取れると思います.年によっては10割も簡単に狙えます.ただ,東工大は行列の階数の問題に代表される,細かい場合分けの問題を好むようなので,複雑な場合分け問題にも臆せずに慎重に計算を進めていきましょう.120分もあるのでとにかく落ち着いて確実に計算していくようにするといいです.
10年ほど前は線形空間や級数なんかも出題されていましたが,近年は似たような問題が出題されているので過去問を中心に勉強するといいと思います.過去問は計17年分解きました.
物理(90分)
物理は大問が3つあり,最近だと【1】が力学,【2】が電磁気,【3】が熱力学or波動という構成です.波動よりは熱力学の方がよく出題されています.力学はいろんな問題が出ます.電磁気は問題集で見たような問題が多いです.たまにベクトル解析みたいな問題もありますが.波動はそんなに込み入った問題は出題されず,高校範囲でもある程度対応できますが,一応大学教養程度も勉強しておいた方がいいです(今年とか特に).熱力学もそんなに込み入った問題は出題されません.たまにHelmholtz/Gibbsの自由エネルギーなんかも出題されるので一応式を覚えておきましょう.
東工大の物理は編入試験の中でも群を抜いて難しいと言われていますが,問題集を何冊かやっていれば6割は取れると思います.90分という時間は東工大の物理のレベルだとかなり短く感じます.分からない小問はキッパリと飛ばして,最後まで解ききるようにしましょう.過去問は計17年分解きました.僕が解いた中ではH9が最も簡単で30分くらいで終わりました.
化学(90分)
化学の本格的な対策を始めたのは試験2週間前からで,当たり前ですが全然間に合いませんでした.過去問はH27,26,25,23を参考書で調べたりググったりしながら解きました.H24は過去17年で最も難しいらしく,見なかったことにしました.
化学は大問が6つあり,理論化学2問,物理化学2問,有機化学2問という構成(らしい)です.ちなみに,昨年(H27編入試験)は無機が1問でていました.理論化学は高校程度の話+αなのでこれに関してはノリで解けちゃったりします.物理化学もそんなに難しくないので,参考書を1周すれば大方解けるようになると思います.極稀にSchrödingerの波動方程式が出題されるので,一応知っておいたほうがいいです.有機化学はマクマリーをある程度やって,重要単語に関する話を理解+暗記していけばそこそこ分かるようになると思います.無機化学はちゃんとやるのはかなり大変だと思うのでこれは捨ててもいいと思います.
僕自身,化学をまじめに勉強したわけではないので,ここでいろいろとアドバイスすることはできませんが,こういったキーワードを元に勉強するといいよ,こういうのがよく過去問でも出題されていたよ,ってのを列記していこうと思います.
- sp3/sp2/sp混成軌道、σ結合、π結合
- 遮蔽効果、有効核電荷
- 主量子数、方位量子数、磁気量子数、スピン磁気量子数
- Pauliの排他原理、Hundの規則
- van der Waalsの状態方程式
- 体心立方格子、面心立方格子、六方最密構造、充填率、限界半径比、
- 熱力学第1法則、エンタルピー
- 熱力学第2法則、エントロピー
- VSEPR則
- 化学反応速度論(リンデマン機構、ミカエリス・メンテン反応、定常状態近似)
- 電気陰性度(第一イオン化エネルギー、電子親和力)
- Lewis/Kekuléの構造式
- 立体配座、Newman投影式、いす形配座
- Markovnikov則、Zaitsev則
- Diels-Alder反応、Friedel-Craftsアルキル化/アシル化反応
- Sn2/Sn1反応、E2/E1反応
- (芳香族)求電子置換反応、求核置換反応
- ベンゼンのニトロ化、スルホン化、ハロゲン化
- Grignard試薬
- シス/トランス付加、オルト/メタ/パラ付加
- キラル/アキラル、光学活性、ラセミ体、立体中心、対称面、メソ化合物
- 構造異性体/鏡像異性体(エナンチオマー)/ジアステレオマー
- 金属錯体、結晶場分裂、d軌道
英語(90分)
英語は最近だと大問が2つあり,【1】が長めで比較的簡単な長文,【2】が短めで比較的難しい長文で,それぞれについて和訳,英訳,T/Fなどがある感じです.最近は40words程の英作文も出題されるようです.長文の長さとしては,最近だと【1】がA4 2~3枚程,【2】が1~2枚程です.ちなみに,H26の長文はかなり長く,【1】がA4 5枚ほどの長文でした.
東工大の英語は非常に高いレベルの語彙が求められ,全体的に難しいです.単語帳を2~3冊こなして,長文をしっかり読めるようにしておきましょう.僕は編入試験の過去問というよりは赤本を中心に解きました.ちなみに,英語の試験問題は平日なら入試課に直接行けば閲覧できるので,試験前日が平日なら目を通しておくといいと思います.
昨年と今までの感じを見るに,今年の試験は数学・化学は易化,物理・英語は難化して,物理の【3】は波動と予想していました.
試験結果と詳細
数学
【1】任意実数を含んだ連立方程式
(1)係数行列の行列式
解くだけです.
(2)方程式の解
東工大の数学でよく問われる「場合分けのある行列問題」です.任意実数のとる値に注意しながら場合分けしつつ計算を進めていけば解けます.
【2】2変数関数の極値
こちらもよくある2変数関数の極値問題です.分数関数なので2階偏微分の計算が面倒臭くなってきますが,落ち着いて計算をしていけば解けます.僕は途中計算を詳細に書きすぎて,後半は答案用紙に収まるように強引に書きました.
【3】3変数関数の全微分
それぞれの変数を与えられた文字に置き換えて,チェインルールを適用していけば解けます.
【4】重積分
(1)積分順序を変更して解く重積分
(2)極座標変換して解く重積分
どちらも非常に簡単でした.
予想通り易化しており,非常に簡単でした.細かい計算ミス等なければ10割とれていると思います.他の受験生もほとんど10割近くとっていたと思います.
物理
【1】力学
(A)次元解析
まさか1問目から次元解析を出してくるとは.定義通り計算していけば解けます.
(B)アウトウッドの滑車(滑車にかけた糸の両端におもりをつるしてある)
前半は滑車の慣性モーメントを求めて,片方のおもりを手で押さえたときの手から受ける力,手を離したときの加速度の大きさ,移動距離を表す式をそれぞれ求めていくというオーソドックスなものでした.後半は全力学的エネルギーが保存されていることを証明する問題でした.前半は良かったのですが,後半で焦ってしまい,計算のつじつまが合わなくなってきたので捨てました.
【2】電磁気
平行平板コンデンサに関する問題でした.前半はガウスの法則を用いて電気容量を求めたり,エネルギーを求めたりとオーソドックスな問題でした.後半は導体間に生じる変位電流密度と磁束密度の大きさを求め,具体的な各種数値が与えられた上で磁束密度の最大値を求めるというものでした.過去問は17年分ほど解いていましたが,変位電流密度の出題は多分初めてだと思います.定義をなんとか思い出して,うろ覚えながらも強引に解きました.後半はあまり自信ないです.
【3】波動
最近は熱力学からの出題が続いていたので,そろそろ波動来るかなと思っていたら本当に来ました.2階の微分方程式である波動方程式とその解に関する問題です.
(A)定数の物理的意味
波動方程式の解における定数(速度定数)の物理的意味を考える問題でした.高校程度の範囲である波の式の定義を知っていたらなんとか解けるかなって問題でした.
(B)波動方程式の解に関する問題(いまいち何の問題なのかわかりません)
これに関してはよくわかりません.今年の波動のような問題は初めて見た問題で,そもそも何を求めさせようとしてるのかすらわかりませんでした.ただ,一番最後の小問はただの弦の基本振動に関する問題だったので,これは高校程度の知識でも解けたと思います.
こちらも予想通り(あまり嬉しくないですが)難化していました.【3】の波動は,過去17年の波動の問題の中で群を抜いて難しかったです.出来は5〜6割.熱力学は得意なので,【3】が熱力学だったら7~8割とれたのになぁ…って感じです.
化学
【1】理論化学
(a)アルカリ金属の第一イオン化エネルギーの大小並べ替えおよび説明
(b)第4周期の遷移金属元素(ScからCuまで)の第一イオン化エネルギーについて
(c)ダニエル電池の標準起電力
(c)に関しては勉強してなかったのですが,高校程度の知識とカンで強引に解きました.
【2】理論化学
(a)解離平衡とpHに関する問題
(b)酸塩基反応における酸と塩基の判別
この辺は勉強していたので概ねできました.
【3】熱力学
気体分子の運動についての議論の穴埋め問題
物理で熱力学が出ないと思ったら化学でがっつり出ました.多くの受験生がこの大問には救われたんじゃないかなぁと思います.勉強していなくてもその場で考えて解けるような問題でした.
【4】理論化学
(a)主量子数が1, 2, 3のそれぞれにおいて水素原子の取りうる電子軌道の数
(b)水素原子の1s, 2p, 3d軌道における量子数
(c)(b)の電子軌道とK, L, M殻の対応
(d)単原子イオンの電子配置
(e)発光スペクトルのエネルギー
(e)以外は比較的解きやすい問題だったと思います.(e)についてはあまり自信がないです.
【5】有機化学
(a)ベンゼンの反応
(b)同位体交換反応
有機化学は付け焼刃での勉強なのでほとんどカンで解きました.(b)については全く意味が分らなかったです.
【6】有機化学
(a)形式電荷を付与した構造式
(b)アルケンアルコールの酸性の大小
(c)安定な立体配座
(d)化学反応と立体化学
これについてもあまり自信がないです.ほとんどカンで解きました.
こちらも予想は的中し,易化.化学は全然勉強間に合っておらず,ダメで元々でしたが思っていたよりは解けました.【3】の気体分子の運動および熱力学に関する問題なんて解きながら「ありがとうございます…!ありがとうございます…!」って感じでした.【5】,【6】の有機は勉強したところは全然出題されず,ほとんどできなくて悔しかったです.出来は6割くらい.
なお,上の問題の要約はおそらく正確ではありません。他の、もっと化学に力を入れていた方の編入記を参照するほうがいいと思います。
英語
【1】二人の海外経験に関する話
ごめんなさい長文の内容よく覚えてないです.A4 3ページほどの長文の後,いつもの英訳・和訳があり,内容選択問題,そして40wordsの英作文がありました.
【2】動物の集団生活に関する話
こちらもよく覚えていません.A4 2ページほどの長文の後,類似単語の選択,英訳・和訳がありました.
予想通り,難化.長文の量は昨年の1.5倍くらい?英語は自信があったのですが,焦って変な解き方したせいでかなり時間をロスしてしまい,全然解けませんでした.非常に悔しいです.もしかしたら5割超えてないかもしれません.
面接
面接時間はだいたい6分くらいで,情報工学科では口頭試問はないようです.
以下,聞かれたことを時系列に列記します.
- 昨日の試験はどうだった?
- 数学,物理は何割くらいとれた?
- 東工大に入って何がしたい?
- 授業以外で英語は勉強してる?
- 英語はどんな風に勉強してる?スピーキング,リスニングは?
- 将来は何になりたい?
- 博士までいく?
- 研究者になりたいっていったけど,大学で,企業で?
- 大学の先生になりたい?
- 卒研は何してる?
- 卒研でつまっているところある?
- 他に受験してる大学ある?
- 差し支えなければその合否を教えて(なぜかどちらに進むかは聞かれなかった)
- ばいばい
合否
合格でした.情報工学科は21人中4人合格.全体としては受験生96人中31人合格です.全体の実質倍率は3倍ほど.
おわりに
4つ目の受験校ともなると,他の大学の編入試験のときに仲良くなった人との再会も多々ありました.特に電通大でできた友達が多かったです.ちなみに,その人達もみな電通大受かっていました.
入学して10日ほどですが,知的好奇心と向上心をくすぐられる毎日です.留学生も多く,国際的なコネクションを得る機会が豊富です.とても素晴らしい大学なので,ぜひ東工大目指してがんばってください!
最近のコメント